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HNA2009吟行風景 写真提供:デイビッド・ラヌー
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カナダの首都オタワへは、成田空港からトロントまでの12時間のフライト、その後国内線に乗り換えて42分掛かりました。1991年より隔年で開催されてきたHaiku North America大会は今年で10回目を迎えました。気が付けば、1997年のポートランド(オレゴン州)、1999年のエヴァンストン(イリノイ州)、2001年のボストン、2005年のポートタウンゼント(ワシントン州)、それに今回を入れると5回目の参加となりました。次回は2011年、ディケータ(イリノイ州)での開催です。皆さまも、英語ハイクを体験しに参加してみませんか?
Haiku North America: http://www.haikunorthamerica.com/
オタワでは、国立図書館・文書館を会場に8月5日には、地元のOttawa Citizen紙に四国巡礼体験記を連載された同紙記者のロバート・シブレー氏のスライドをふんだんに交えた講演がありました。俳句を愛好し、俳句を窓口に広く日本を知ろうとして下さっている主催者側の意図を嬉しく感じました。私は、翌8月6日、朝9時スタートの「Feel the Word」と題する講演と、2時半よりの「JAL Reading」、そして夜の9時からは「International Reading」の日本代表として朗読という三つの出番を頂きました。この日が終ってしまえば、後はひたすら楽しむだけです。 これに先立ち5日の朝は、大会運営委員会のガイ・シムザーさんと一緒にCBCラジオの本局のスタジオに入り、パーソナリティーのキャッシーさんのインタビューを受けました。ラッシュアワーの8時15分からの放送で、車を運転しながら聴いている人の多い時間帯です。質問の内容は、俳句は季節を詠む詩なのか、日本ではどの程度普段の生活の中に俳句が浸透しているのか、カナダの俳句事情など。「春寒し納戸に祖母の裂箪笥」と「budding weeping willows−/ silk-strained tofu / melts in my mouth」とちゃっかり自作も読ませて貰いました。写真は右からシムザーさんとエイヴィスさんと私。
当協会誌HI No.84の後記に、HIAの20周年記念大会のパンフレットや入会案内を持って大会に参加しました藤本はなさん(当協会事務局・評議員)が概要を書いていますので、ここではプログラムの中から幾つか心に残った話を簡単にまとめて紹介したいと思います。
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★日本から参加のデイビッド・バーレイさんの講演「The Contours of Contemporary Haiku現代俳句の外郭」の日本の現代俳句の紹介では、俳人が文芸作品からの引用によって句の奥行きを深めている効果を指摘。ニック・エイヴィスさんの講演「Crosscurrents from Newfoundland and Labrador ニューファンドランドとラブラドールからの交差する流れ」では、詩壇が俳句という詩形から学んだこと、或いは詩人がハイクという詩形から受けた影響を作品例で辿り、ハイクが一段低い位置にあるとされる風潮の中、詩壇の側から二つのジャンル間にある距離感を縮めるアプローチのあることを指摘していました。俳人もよい詩を沢山読まなくてはと思いました。
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★デボラ・コロジさんの「SF(サイエンスフィクション)ハイクについて」。
書店でハイクの本を探すのであれば、詩のコーナーばかりでは片手落ちです。SFコーナーにもハイクがあるのですという導入部分から、作品の紹介、そして季節を詠む俳句とは別の楽しみが味わえるサイトの紹介がありました。
SciFaiku.com: http://www.scifaiku.com/
Dwarf Stars: http://www.sfpoetry.com/index.html
現在、コロジさんはサイエンスフィクションポエトリー協会会長職にあります。
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★JAL Readingでは、日航財団より現地へ送って頂いた『かぜのうた―世界の子どもがハイクをよんだ 地球歳時記No.10』を配り、約30人の参加者が次々に心に留まった句を朗読しました。オタワ川の向うはケベック州、フランス語圏ですので、フランス語でも、そしてドイツ語、スペイン語などの原句も読んでくださり、日本語は私が読み上げました。一句ずつ絵が添えられていて、前後左右と見せ合いながら子ども達の活き活きとした感性を楽しみました。
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★マルコ・フレッテセリさんのKing's Road Pressより久々のヘクサグラムシリーズが出ました。ロバータ・ベアリーさんの『もう何も言うことはないnothing left to say』、マイケルD.ウェルチさんの『しばらくの間For a Moment』、そしてグラント・サヴェージさんの『風をさがしてFinding a Breeze』です。サヴェージさんの一句を紹介します。
first snow
the cat followed everywhere
by its footprints Grant Savage(オタワ、カナダ)
初雪 どこへ行くにもその足跡を猫は辿った
カナダの冬は長いですから、初雪には長い冬の始まりという重みも感じられます。この句の初雪も、薄っすらと積もるか積もらないかの雪ではなく、しっかりと足跡が残るぐらいの積雪をもたらしています。カナダの猫は炬燵で丸くなるのではなくて、雪のお散歩。
大会中も8月初旬でしたが、駐日カナダ大使のジョナサン・T・フリードさんのアドバイスでセーターを一枚用意して行き助かりました。大会運営のテリー・アン・カーターさんが、大会が終るとすぐ秋が来ますと話していたのも印象的でしたし、前に紹介しましたニック・エイヴィスさんが「ニューファンドランドには季節が二つしかない。この前の冬とこの冬だ。」というジョークを講演の中で紹介していたことも耳に残っています。
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★マイケル・D・ウェルチさんの「Your Haiku Archives: The American Haiku Archives」は、サクラメントにあるカリフォルニア州立図書館内に設けられたアメリカのハイクの歴史を留める文庫の紹介。当時の館長のケルヴィン・スターさんと俳人のジェリー・キルブライドさんの発案によって1995−6年に設立されました。パワーポイントのスライドショーでは収蔵品の一つ一つにホルダーや箱を作る作業が紹介されプロフェッショナルな管理がされていることに感銘を受けました。
http://www.americanhaikuarchives.org/
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★故ウイリアム・J・ヒギンソンさんの追悼会。奥様のペニー・ハーターさんを囲んでそれぞれが思い出を語り合いました。長距離電話で夜を徹して8時間の俳句論議をしたという人が数人おられたのには驚きました。HNA大会の歴史で唯一人皆勤賞だったヒギンソンさんが2008年10月に逝去されて寂しくなりました。
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吟行会は、国会議事堂、ノートルダム寺院、市場を歩きランチ解散となりました。一句無記名で投句しまして、最終日に表彰式がありました。また、クラウンプラザホテルの最上階レストランで開かれたHNA晩餐会ではジョン・ブランディさんの講演があり、次回のHNA開催地イリノイ州ディケェータの新実行委員へ、オタワの実行委員のテリー・アン・カーターさんたちからの引継ぎが行われました。日本大使館からもお二人いらして下さって首都オタワならではの粋な計らいに感じ入りました。晩餐会の後はオタワ川での船遊び。貸切りボートのディスコダンスパーティーでした。途中、マイクと船長の帽子を順番に手渡しながらの自作のハイクやレンゲイの朗読会を挟み、ディスコの熱気に夏の夜は更けていきます。高齢化社会の波が押し寄せているのは海外でも同じことですが、静かに自然に枯れていくつもりの私とは全くパワーが違いました。
大会の模様は、http://picasaweb.google.com/MichaeDylanWelch でマイケル・D.・ウェルチさんが撮った1101枚の写真を見ることが出来ます。
藤本さんと二人で参加したことで、大会に日本からの涼風をすこしだけでも吹き込めたのではなかったかと自負しております。今回の私の講演で行ったアンケート調査から、翻訳された日本の植物季語が日本では一年のどの月に分類されているかという季感(高濱虚子の『新歳時記』、三省堂1993年版を参照)を海外の読者には喚起できていなかったということが分かりました。一句を翻訳する際に季語と季節を明記してあるLove Haiku: Masajo Suzuki's Lifetime of LoveやEinstein's Century: Akito Arima's Haikuは、鑑賞する際に大変役立つという意見を貰いました。
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ページを開くとTo William J. Higginson 1937-2008と読めるヒギンソンさんへ捧げられた大会参加者のアンソロジー『私たちの言葉の中へ Into Our Words』よりタイトル句の鑑賞:
setting sun−
the mountain's shadow creeps
into our words
Gary Hotham
Scaggsville, Maryland
沈む夕日――
山の影が(知らず知らずの内に)入り込む
私たちの言葉の中に
ゲリー・ホットマン(スカッグヴィル、メリーランド)
この句にはちょっとした歴史があって1973年7月にHaiku Magazine誌の編集長だった故ヒギンソンさんより採用の通知が来たのにも拘らず掲載されずにあったものだそうです。その後1977年までの手紙に「いつか掲載するつもりです。」と書いていたヒギンソンさんに捧げられたこの合同句集の中で、36年前に採用されたこの句がやっと彼の言葉通りに活字になりました。ヒギンソンさんのハイクへの貢献の記念としたいと前書きに記してありました。
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2009年の1月6日に米国場ヴァージニア州に非営利団体のThe Haiku Foundation: http://thehaikufoundation.org/ が設立されました。英語ハイクにおける最初の100年間の成果を保存する文庫としての役割と、英語圏でのハイクの発展を目的とするとしています。
代表はジム・ケシアンさん。西海岸、サクラメントにはハイクアーカイブス、そして東海岸ヴァージニア州、ウィンチェスターのハイクファウンデーション。アメリカハイクの成熟を感じます。
アラン・ピザレリさんとドナ・ビーヴァーさんがお届けする Haiku Chronicles: http://haikuchronicles.podbean.com/ をご紹介します。既にシリーズを重ねていまして、最新の話題は、Episode 5-History of American Haiku Part II, The Beat Poetsです。コア・ヴァン・デン・フーヴェルさんが、アメリカ西海岸のビート詩人達との出会い、アレン・ギンズバーグを通しての俳句との出会いを語り、ナロパ大学で行われたギンズバーグの俳句の朗読と講演のテープも聴くことが出来ます。
HIAの書架より、一冊ご紹介します。『句歌集 あかさたな あかさかな』大石道子 共訳ジュディス・チャルマー、本阿弥書店、2008年。大石さんは米国バーモント州在住。
fall cloud
a child draws
flapping away
konoegaku torigahabataku akinokumo
子の描く鳥がはばたく秋の雲 大石道子
原句には切れがないので、この句は一物仕立て。flapping away でa birdと言わずに鳥が羽ばたいていることを表す仕掛けですね。羽ばたいている鳥の形というよりも、羽ばたくという動きを雲に見ているのでしょう。a childですからご自身の子どもというわけではなくて、公園で見かけた風景なのかも知れません。爽やかな秋空が広がります。
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