俳句紀行
俳句紀行 - 第38回
宮下惠美子
ドイツ俳句協会誌『夏草125号』より10句にクラウディア・ブレフェルドさんが英訳を付けて下さいましたので更に和訳を付けてご紹介いたします。
ドイツの俳人達との交流の一つの形として、これから毎号このような形でご紹介いたします。HIAホームページでは「拾い読みHI誌」というページで『HI』誌より抜粋した英訳付きの会員の俳句をご紹介していますが、新たにドイツ俳句協会のホームページでも『HI』誌掲載句をマーティン・トーマスさんとクラウディアさんが日本語から直接ドイツ語に翻訳してご紹介下さることとなり、2019年6月26日にDHGのホームページにHIAの紹介と『HI #141』の句がアップされましたのでご覧ください。
クラウディアさん(中央)とエレンさん(右) 5月のドイツ俳句協会総会にて
SOMMERGRAS 125
Waldhimbeeren wieder werde ich mich verspätenChristof Blumentrath クリストフ・ブルーメントラート |
wild raspberry again I will be late 野生のラズベリー またしても私は 遅刻する |
Frühlingserwachen … in der Sonne verblasst eine Plastiktulpe Horst-Oliver Buchholz ホルスト - オリヴァー・ブーフホルツ |
spring awakening … faded in the sun a plastic tulip春の目覚め . . . 太陽に色あせる プラスチックのチューリップ |
Regenguss die Tulpen verneigen sich vor den VeilchenHildegard Dohrendorf ヒルデガルト・ドーレンドルフ |
downpour tulips bow to the violets土砂降り チューリップがお辞儀する 菫に |
Mairegen auf dem Gesicht der alten Frau ihr MädchenlächelnAnke Holtz アンケ・ホルツ |
May rain on the face of the old woman her girl’s smile五月の雨 老女の顔に 少女の笑み |
Wohnungsauflösung … in der Zigarrenkiste das Foto von mirEva Limbach エファ・リムバッハ |
liquidation of home … in the cigar box a photo of mine明け渡す家・・・ 葉巻の箱に 私の写真(*老人ホームへ入居、或いは亡くなって家を空にして明け渡す状況とのこと) |
heimatlos – suche den Kirchturm am HorizontAngelica Seithe アンゲーリカ・ザイテ |
homeless – searching for the steeple on the horizon故郷喪失- 教会の尖塔を探し 見渡す地平線 |
Morgennebel ein Sonnenstrahl trifft meine FrühlingsträumeBrigitte Weidner ブリギッテ・ヴァイドナー |
morning mist a sunbeam meets my dreams in spring 朝靄 日差しが出会う 私の春の夢 |
erster Schnee der Duft des neuen LichtsGérard Krebs ジェーラル・クレープス |
first snow the scent of a new light 初雪 新しい光の 匂い |
öffnende knospen die zarten hüllen der stilleHelga Stania ヘルガ・シュタニア |
opening buds the fine coatings of silence 開きかけの蕾 やわらかい静寂に 包まれて |
Morgenlicht im grünenden Hinterhof gurrende TaubeIngrid Töbermann イングリット・テーベルマン |
morning light in the greening backyard a cooing pigeon朝の光 緑成す裏庭に 啼く鳩 |
(和訳: 宮下&マーティン・トーマスさん)
エレン・アルトハウス‐ロハスさんはハイデルベルク大学の国際研究センターで、留学生にドイツ語を教えています。俳句を使って、様々な背景を持った留学生たちの表現力を広げています。6月の第3週には、オレゴンの学校で俳句を学んでいたアメリカからの学生が俳句の作り方をクラスで紹介し、トルコ、コロンビア、ナイジェリアから来た学生たちとドイツ語でハイデルベルグの夏を詠みました。その中の一句をエレンさんの英訳で。
summer semester—
we enjoy our life
learning and loving
エレンさんのクラス写真