第20回記念『草枕』国際俳句大会
国際俳句交流協会九州大会

時:平成27年(2015)11月21日(土)
於:熊本市 くまもと森都心プラザホール

【参考】
事前投句数一般部門3811句 (977人)
外国語部門1313句 (695人)
投句参加国数64カ国 (大賞 ポーランド)
当日投句数1222句 (410人)
当日会場参加者(入場者)350名

大賞受賞者のスピーチ

Dorota Pyra

皆様、

 この度『草枕』国際俳句大会の大賞に選ばれたという知らせを受けてとてもうれしく存じます。これはとても栄誉なことで、心より感謝申し上げます。

 この大会の組織委員の方々がこの俳句という美しい詩形態の普及をめざし、ー競争は仕方ありませんがー世界中の詩人たちに心を開いて下さっていることはとても有難いことです。また、私の作品を大賞に選んで下さった選者の方々に感謝申し上げ、本日熊本で行われている大会の一端を担わせていただいていることに深い感謝を覚えます。

 実は少し前の2009年8月に日本を訪ねる機会がありました。そのとき訪ねた町は松山でした。そこでは、日本の最も偉大な詩人かつ作家である夏目漱石の足跡を訪ね、漱石はまぎれもなくこの松山に居たことを知りました。そしてこの町には漱石の小説『坊つちゃん』の記念として坊つちゃん時計があり、この時計は今もよく覚えています。その時はまさかこの漱石に関係の深いもう一つの町に行くことになろう夢にも思いませんでした。その町とは熊本です。そして私の俳句が間違いなく今まさに皆様と共に此処熊本にあるのです。

 私の住んでいる所はポーランドのグダンスクという町で、目の前にはグダンスク湾が拡がっています。海辺に住んでいますので潮の匂い、趣き、色合い等をよく知っております。昼夜の海の音もよく心得ています。経験を通して海を知り、その恵みに感謝しております。それは確かに大きな喜びなのですが、しかし同時に海は世界のどこででもまったく異なった思いもかけないーしかも劇的な顔を見せることも知っております。

 私の作品は2011年3月11日のあの出来事の影響を受けております、日本の海岸を襲ったあの津波のことです。あの時の写真やビデオを何度も再生させることで私の感情は打ちのめされ、魂に深い傷の記憶が残りました。心の襞に触れてこのような気持ちや感情を言葉にすることは困難を極めます。特に心が深刻な悲劇に由来している場合はなおさらです。ですから許していただきたいのですが、私の出来ることと云えば、私の記憶と気持ちを俳句という言葉で表現させていただくことだけなのです。

after tsunami
a surplus
of emptiness

どうもありがとうございました

ドロタ ピラ (Dorota Pyra)