英作ハイク -入門-

お知らせ





リレー連載・海外の句会紹介
泰国日本人会文化部 メナム句会

2008年5月

 

メナム句会の発足および現在の活動状況

1950(昭和35)年にタイ国日本人会第1号のクラブとして発足し、現在は同会文化部所属の俳句会として毎月第2土曜日に例会を開いています。
 例会はバンコクにある日本人会館本館にて行っています。特に指導者はなく、互選を中心に行う同好会で、現会員の何名かは、『春燈』、『天為』、『古志』などの結社の同人・会員としても活動しています。
 また、年に2回ほど吟行句会を企画し、数年毎に会員の合同句集(2006年に第7句集)も発行しています。会員数は20名(休会中・通信会員を含む、2008年5月現在)です。

チョンブリー県シーラーチャー郡のローイ島吟行   バンコク都内のスワンパッカード・パレス吟行(8 Mar 08)

チョンブリー県シーラーチャー郡のローイ島吟行(9 Feb 08)

バンコク都内のスワンパッカード・パレス吟行(8 Mar 08)


(写真と文・メナム句会)

タイの気候と季語

 タイは国土の大部分が熱帯サバンナ気候に属しており、年中真夏のように思われがちですが、暮らしてみると意外にはっきりした季節感があり、一般には、暑季(3〜6月頃)、雨季(7〜10月頃)、涼季(または寒季。11〜2月頃)の3季に分けられています。メナム句会では、日本の歳時記に基づく季語の他、このようなタイの季節に合わせ、当地特有の季語も使って作句をしています。また、当地での感覚を大切にし、タイで最も暑い4〜5月に「炎暑」や「蝉」を詠んだり、「ハンカチ」など夏の季語を日本の夏以外の季節にも幅広く使ったりして、自由で柔軟な句作をこころがけています。

では、メナム句会で使っている特有の季語の一例を紹介します(タイだけでなく、他の国で使われている季語もあります)。


【行事】

メナム句会では、タイの年中行事も多く俳句に詠み込んできました。年中行事には、「ソンクラーン(タイ正月)」や「ローイクラトン(灯籠流し)」、「中国正月」などの祭日、「万仏節」や「入安居」、「出安居」など仏教行事、「国王誕生日」、「王妃誕生日」など王室に関わる日、その他「先生の日」や「子どもの日」、「文芸の日」などの記念日もあります。


◎ ソンクラーン(ソンクラン)

タイの太陰暦の正月で、インドに由来しています。現在は、太陽暦の4月13日が元旦とされ、元旦から3日間休日が続きます。年始には年長者の手に清めの水を注ぐ風習があります。ただし、現在では、路上で水鉄砲やホース、バケツを使った「無礼講の水の掛け合い」の方が多く見られます。句会では、「タイ正月」、「灌仏節」、「水掛祭」、「水祭」とも詠んでいます。


◎ ローイクラトン(ロイクラトン、ロイカトン)

太陰暦第11月または12月の上弦15日満月の日に行う灯籠流しの祭で、太陽暦では11月頃となります。バナナの葉の灯籠(クラトン)にロウソクや花を入れて流し、恩恵深い水の精霊に感謝し、農民が感謝を捧げる恒例の祭です。が、現在の若者の間では、恋人同士が一緒に灯籠を流しに行く「愛の日」のようなイメージになってしまっています。


【植物】

タイで見られる花には、1年に1回決まった季節にしか咲かないものと、1年中咲くものとがあります。後者の場合でも、美しく盛りとなる季節が決まっているものがあり、その場合は盛りの季節の季語となります。果物も同様、最もおいしくなる季節があるので、年間にわたって収穫できる果物でも、季語となることがあります。


◎金雨花

タイ名: クーン、ラーチャプルック
和 名: ナンバンサイカチ
英 名: ゴールデンシャワー

金雨花タイの国花で、2007年の日タイ修好120周年のロゴ・マークに桜花と並んで描かれました。

金雨花とは、ゴールデンシャワーを和訳した造語ですが、美しい言葉なので、長年メナム句会で季語として使っています。

花の季節は2〜5月頃で、黄色一色の花房が藤の花のように枝から下がる姿は見事です。



◎タイ桜

金雨花日本の桜の季節に咲く、桜のような色合いの花木類を総称して、在タイ日本人は「タイ桜」と呼び、句会では暑季の季語としてきました。

古くから多く見られたタイ桜は、オオバナサルスベリの仲間(タイ名・インタニン)ですが、これは「紫桜」とも呼ばれています。

他に、コチョウセンナ(同・カンラパプルック)、キダチベニノウゼン(同・チョムプーパンティップ)などがタイ桜と呼ばれています。





上に挙げた季語はほんの一例ですが、行事や植物の他にも、「スコール」や「マンゴ雨(マンゴーの花が咲く1〜3月頃のぱらぱら雨)」といった天文、「チンチョック(守宮)」、「トッケー(トッケイヤモリ)」、「鸛」などの動物も多く詠まれています。
 今後は、半世紀余も続いたメナム句会の季語集を編んでいくことが大目標です。現在、過去の句会記録をまとめている他、盛りとなる季節をまだ把握していない花や果物についても、各自観察したり、タイの人に尋ねてみたり、文献を調べたりして「季語の勉強」を続けています。


(写真と文・イーブン美奈子)

会員の俳句作品(順不同。帰国者含む)

金髪の天使のころぶハローウィン 川井 順子
徳をつむ犬も子供も吉良忌かな 鬼海 京子
仏生会子らに優しきタイの民 豊田 美帆
椰子蟹の籠に淋しき落暉かな 大口 のり子
マンゴ樹の吐息か宵の蝉しぐれ 大口 憧遊
唐辛子ばかり売る店朝市場 中田 朗子
赤トンボ翔を透かすや寺の門 野村 慈水
守宮の子闇は大洋ほどもあり イーブン美奈子
枯れ芭蕉背に載せてみる子象かな 山本 良子
稲妻に浮き出て蛇行するメナム 長尾 俊郎
タイ櫻われも居場所を定めけり 大出 勝重
スコールやバンコク平野水浸し 嵯峨 春野

タイ国で俳句を詠むための工夫と旅行者へのアドバイス

バンコクへ赴任して3年になりますが、この間にたくさんの俳句を詠むことができました。日本の四季の移り変わりとは違ったタイ国ならではの季節のうつろいを感じますし、人々の生活は生き生きとしていて句材には事欠きません。海外詠だからといってカタカナ語にした現地の言葉を多用するのではなく日本語での作句ですので字面なども整えて、しかし南国の光が感じられるような句を心がけています。海外詠をとお考えの旅行者へのアドバイスとしましては、昼間のちょっとけだるい街の感じと夜の活気溢れた街、と2面性をもつこの街を対比してみても面白いかもしれません。また、お祭り等も上記にあげたように、タイ独特のものがありますので、日程が合いましたら、ぜひ、遊びに来てくださいませ。


(文・中田朗子)

 
参考文献: 安藤浩・著『タイの年中行事』タイ国日本人会文化部
タイ国日本人会・編 会報誌「クルンテープ」各号・特別号
レヌカー・ムシカシントーン著『タイの花鳥風月』めこん
大口憧遊・著「常夏の季語」(フリー情報誌「the Voice Mail」に連載) 他多数
備考: 本文および写真の無断転載は固くお断りします。
連絡先: 泰国日本人会:http://www.jat.or.th/
文化部メナム句会:http://www.jat.or.th/kakubu/bunkabu/menamu.html