英作ハイク -入門-

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第2回 第1回          
リレー連載・海外の句会紹介
フィリピン共和国 マニラ句会

2008年7月

 

マニラ句会の発足および現在の活動状況

句誌の一部

句誌の一部

マニラ句会の初句会は、1989年(平成元年1月)に、句会の発起人水野美枝さんの自宅にて行われ、以来、今日に至るまで毎月第二水曜の夜に句会が開かれています。句会記はマニラ日本人会会誌『マブハイ』に毎月掲載されています。バンコクのメナム句会で初めて俳句に触れ半年ほど在籍した後に帰国した水野さんが、1987年に半永住を決意して渡ったマニラで『マブハイ』に俳句を投稿し句友を募ったのが始まりでした。

マニラ句会には現在、16名のメンバーが在籍しています。マニラに在住の16名の他に、すでに日本へ帰国したり他国へ赴任したメンバーを加えるとおよそ25名が月に一度の句会に句を投句し、交流を深めています。また月々の句会のほかに、マニラ句会では句誌の編集にも力を入れており、年誌『フィリピンを詠む』は句友の作品が散逸しないよう、またマニラ滞在の良き思い出にという思いで作成され、第十九集となる最新刊『2007年度フィリピンを詠む』は2008年7月出版予定です。年誌のほか、 熱帯季語に慣れない句会員のために、熱帯季語集『マニラ歳時記』水野美枝・宮田美紀 共編(1996年刊)や、年に数回の吟行の様子を収めた吟行録集『フィリピンを歩く』2冊などもあります。吟行は2008年5月で73回を数え、毎回フィリピン各地へ足を伸ばしています。

2005年11月、フィリピンから日本へ帰国したメンバーにより「マニラ句会同窓会」が誕生しました。現在、春と秋の年2回、日本国内で吟行と懇親会を催しています。毎回の吟行には日本各地より懐かしい顔ぶれが集い、フィリピンを離れたのちも変わらぬ友情を育んでいます。

句会の様子

句会の様子


マニラの気候と季語

四季がある日本とは異なりますが、常夏の国フィリピンにも季節があります。公式の案内書には雨季(5月〜11月)と乾季(12月〜4月)の2シーズンと書かれていますが、暮らしてみますと微妙な季節の移り変りに気付きます。クリスマスや新年の頃は乾季ではありますが、マニラ句会では特に「涼期」と呼んでいます。朝晩、涼しくなり快適なシーズンです。ちなみにフィリピンはアジアの国では珍しいクリスチャンの国、クリスマスは大変盛大です。一方同じ乾季でも3〜5月は「サマー」と呼ばれ、炎暑の日が続きます。最もフィリピンらしいシーズンです。

火炎樹

【火炎樹】

和 名: 火炎樹・鳳凰木
英 名: Flame Tree, Fire Tree

5月の中ごろ、炎暑の果てに雷雲が発達し豪快な驟雨が日に一度襲ってくる雨季に突入します。台風シーズンも到来です。6月から10月、11月頃まで雨季が続きます。
 マニラ句会作成の『マニラ歳時記』には、各シーズンの熱帯季語が網羅されています。しかし花につけ、果物につけ、やはり代表的な熱帯季語は「サマー」に集中します。そんな中でもサマーを印象付ける代表的なフィリピンの花樹はといえば、「火炎樹」。最近の火炎樹の句をご紹介いたします。


遠目より山波揺れる火炎樹花 岩崎 宏
火炎樹花兵士の墓地や炎舞ふ 栗田睦子
火炎樹花薄暮の空に灯をともす 合田恵子
ざざ降りの後の火炎樹海通り 兒玉童心(日本からの投句)
揺られ来て火炎樹の村遠望す 小林英治(日本からの投句)
艶やかに品忍ばせし鳳凰木 佐々木節子
(シンガポールからの投句)
火炎樹花恋と愛とを競いけり 笹本直幹
火炎樹と誰が付けしや空に燃ゆ 七條天蛇
火炎樹や道しるべとなりて車窓かな 田部浩子(日本からの投句)
火炎樹の咲き初めし頃旅立ちぬ 永田恵理
火炎樹の赫深めたる陽のあお 水野美枝
火炎樹のあか薄ぼけて曇天に 水野露露
火炎樹や墓地に祈りの灯のごとく 宮田美紀(日本からの投句)
昼下がり時刻ときが止まるや火炎樹に 安田羊宮
火炎樹や野の果て地の果て焼き尽くし 山浦ゆう子

「マンゴー」は熱帯の輸入果物として近年日本でも大人気ですが、フィリピンでは最も一般的な果物といえるでしょう。フィリピンは南北に長いので、マニラの市場では一年中各地からのマンゴーが手に入りますが、サマーの頃になると郊外はもちろん街中の庭先や街路樹でも樹に生っている実を簡単に目にすることができます。句友の句を紹介しましょう。


車窓より見つけしマンゴー陽を受けて 合田恵子
青き実の蒼きが揺れるマンゴー樹 水野美枝
盗人におびやかされしマンゴー樹 水野露露
マンゴ樹に熱風深く潜りこむ 宮田美紀
庭先のマンゴー実り季節ときを知る 安田羊宮
梢よりもぎしマンゴー日のぬくみ 山浦ゆう子
マンゴ樹陰ここやあそこに憩ふ友 渡邊悦子
町騒を遠にマンゴーふかねむる 村上きみい

採れたての果物   鈴なりの青マンゴー

採れたての果物

鈴なりの青マンゴー

フィリピン吟行のアドバイス

先にも少し書きましたが、フィリピンが一番フィリピンらしいのは3月から5月の「サマー」。様々な熱帯の鮮やかな花樹が目を楽しませてくれます。また7000余もの島からなるフィリピンではダイビングやシュノーケルなどには事欠きません。こういった海のアクティビティにも「サマー」が最適です。しかしながら吟行をお考えでしたら気候の面から見て日本人旅行者に楽なのは11月から1月頃の「涼期」かもしれません。湿度が低く気温も28度前後ですので、快適に旅行できるでしょう。
マニラ近郊の吟行でしたら、車で二、三時間のタガイタイ高原やタール湖などの散策がおすすめです。パイナップル畑が一面に広がる長閑な景色を楽しめることでしょう。スペイン領時代の古い教会や建物の見学でしたら、マニラ市内のイントラムロスも良いと思います。マニラ大聖堂や世界遺産に登録されているサン・アウグスチン教会などを見ることができます。

その他、マニラから車で8時間ほどかかりますが、世界遺産バナウエのライステラスへの小旅行も良いでしょう。ライステラスとは棚田のことで、その美しい光景から天国への階段と呼ばれています。マニラ句会でも何度か一泊二日の吟行旅行に出かけています。

(文と写真:マニラ句会)

俳句がつちかう真の友

マニラ句会は、誕生してから20年の間、構成メンバーに老・若・男・女が全て揃っているという理想的な句会を続けてきました。句会では主婦が企業戦士の世界を覗き、男性は女性の本音を垣間見ることができます。自分の世界とは違う世界を知るには句会が一番です。句会はおしゃべりの他に、俳句からも違う世界を知ることができます。そして俳句からその作者の人柄を知り、真の心からの友を得ることができます。海外に住むからこそ、心からの友人が必要なのです。
  2007年10月に、岩手県北上市にある日本現代詩歌文学館(北上市本石町2-5-6、電話0197-65-1728、http://www.shiikabun.jp/)にマニラ句会の年誌『フィリピンを詠む』全巻が収蔵されました。これにより私たちの熱帯俳句が後世に残ることになり、大変嬉しく思っています。ご興味のある方は、そちらでご覧いただけます。


(文:水野美枝)

 
連絡先: 水野美枝
26B North Pacific Plaza Towers, Bonifacio Global city, Tagig, Metro Manila, Philippines
Phone: (63)-2-818-0253
e-mail: akimizu@pacific.net.ph