英作ハイク -入門-

お知らせ






第5回HIA俳句大会のご報告

2003年11月28日、第5回HIA俳句大会が開催され、第5回「俳句・ハイク」コンテストの結果発表及び表彰、記念講演、懇親会などが、以下の通り行われました。

日時:2003年11月28日(金)1100〜1400
場所:東京会館


第5回「俳句・ハイク」コンテスト

応募句数

俳句部門735句、ハイク部門428句(29ヶ国)

参加国別内訳(ハイク部門)
USA202、日本32、カナダ24、オーストラリア22、ニュージーランド22、UK20、 ルーマニア16、モンテネグロ12、ベルギー8、ドイツ6、ハンガリー6、ユーゴ6、 スロベニア6、セルビア6、フランス4、イタリー4、ブルガリア4、インド4、 メキシコ2、アルゼンチン2、オーストリア2、デンマーク2、マルタ2、クロアチア2、スウェーデン2、アイルランド2、ロシア2、フィリピン2、マレーシア2、不明2
入選発表
及び講評

俳句部門  :鷹羽狩行(選者代表、HIA顧問、俳人協会会長)
ハイク部門:星野恒彦(選者代表、HIA副会長)
入選作品紹介はここをクリック。

表彰(賞状、賞品)

俳句部門の協会賞受賞者、ハイク部門の特選受賞者:賞状及び賞品を贈呈
俳句部門の特選・入選者、ハイク部門の入選者:賞状を贈呈

記念講演

講演者:エイドリアン・J・ピニングトン(早稲田大学教授)
演題:俳句とハイク - 翻訳から創作へ -

 

第5回 2003年

俳句部門

選者
金子兜太 稲畑汀子 鷹羽狩行 松澤昭 有馬朗人 木暮剛平 阿部完市 坊城中子
永田龍太郎 山崎ひさを 倉橋羊村 宮津昭彦  大久保白村  津根元潮 加藤耕子
山田弘子
講評
鷹羽狩行

国際俳句交流協会賞

 
羅の人より風を賜りぬ 明吉享子 (東京、中野区)

これは散文ではあり得ない表現で、「羅を着た人から涼しさを賜った」という句である。高価な絽や紗の召物を着ていて、たぶん美人。暑い夏にあって、通りすぎただけで、或いは話をしただけで、涼しさを覚えさせてくれるような人。いかにも涼しげな印象を、「風を賜りぬ」といったのがよい。
赤とんぼ昔のいろに明治村
西上禎子 (大阪、吹田市)

この句は切れが難しい。「赤とんぼ―昔のいろに明治村」、「赤とんぼ昔のいろに― 明治村」、「赤とんぼ」も「明治村」も「昔のいろ」であると、三通りの解釈ができる。明治村にあっては、人工のものではない赤とんぼまでが明治の色だと私は解釈した。山口青邨の「外套の裏は緋なりき明治の雪」を思い出す。赤とんぼの「赤」がこの「緋」を連想させるからか。明治の色というと煉瓦色を連想する人もいるだろう。明治村では人工的に造られた建物の色ばかりでなく、昆虫までが昔のよき色をしているという。

俳人協会賞

 
オアシスに来て逃水も休みけり 天岡宇津彦 (岐阜、大垣市)

「逃水」は春の季語で、蜃気楼や陽炎の類である。武蔵野の名物であった逃水を、国際化の中で、砂漠の中で捉えているところが素晴しい。キャラバンがオアシスまで来ると、逃水も人間と一緒に休憩していると見た。季語は逃水であるが、全体を貫くのは強烈な夏の季節感であろう。一服したけれども、また炎熱地獄の砂漠に出て行かなければならない。砂漠という土地柄をよく打ち出していると思う。

現代俳句協会賞

 
糸遊や古事記増刊号有ります 中田里美 (東京、板橋区)

写生の立場の解釈では、全三巻という日本最古の歴史書の増刊号が店頭に並んでいるとか、平成の世に出たとかとなるが、そうではない。「糸遊」のイメージが「古事記増刊号有ります」で象徴されている。逆にいえば「古事記増刊号有ります」というのは、形にすれば、それは陽炎のようなものであるという。従来になかった新しさを表現するために、あえて古い言葉「糸遊」を使っている。各自がこの句から受けるイメージで自由自在に解釈できる楽しさがあり、伝統的解釈ではむずかしい。曰く言い難い混沌としたものを何とか表現してゆくのも詩であるなら、こういう句もあってよい。それを含めて現代俳句というものの幅がある。

日本伝統俳句協会賞

 
径譲ることさへ愉し春の風 田上眞知子 (富山、高岡市)

冬の風との違いがよく分かる句である。寒い時は「径譲ることさへ」ないだろう。個々が独立して、触れ合うこともない。心地よい春風が吹く頃の細い道、田舎道か。互いに譲り合っている。冬なら譲らずにぶつかってしまうところ。麗かで長閑な春がやって来た、その季節感がよく出ている。「愉し」と言ってしまうことに賛否両論があるだろうが、これは「愉し」と言わざるを得ない句の見本か。

日本経済新聞社賞

 
楽しげに苦労話を生身魂 和泉金子 (香川、木田郡)

生御魂というのはお盆に、親に当たるような年長者を、故人と同じように崇めもてなした。いわば生き仏のような人のこと。「楽しげに苦労話を」がポイントで、若い時代、いかに大変であったかを物語る。

ジャパンタイムズ社賞

 
父の髭祖父もカイゼルパリー祭 浅野賀子 (島根、松江市)

俳句独特の省略がある。父の髭も祖父の髭もカイゼル髭である。折から今日はパリー祭、 7月14日のフランス革命の記念日である。映画「巴里祭」の影響もあり、古きよき時代を偲ばせる日である。そういえば、父も祖父もカイゼル髭であった。そういう古きよき時代も遠くなったなあという句である。パリー祭がエキゾチックなムードをかもし出している。

ハイク部門

選者
星野恒彦 柴生田俊一

国際俳句交流協会賞(特選)

星野選(和訳共)
from the fog
that closed the airport --
a honking of wild geese
John Bernard Ower (U.S.A)
空港を閉ざせし
霧に
雁の声
ジョン・バーナード・オウアー (アメリカ)

A butterfly
is using my shadow
-- Oppressive heat
Gilbert Donchez (France)
炎熱や
蝶が入りこむ
吾の影
ギルバート・ドンシェ (フランス)

柴生田選(和訳共)
night nurse
I walk down a corridor
of her perfume
Ernest J. Berry (New Zealand)
夜勤看護婦
その香りの
廊下を歩いて行く
アーネスト・J・ベリー (ニュージーランド)

Indian summer --
two old men on the bench
embracing their stiks
Milosav Doderovic (Montenegro)
小春日和
ベンチに老人二人
杖を抱え込んで
ミロサヴ・ドデロヴィク (モンテネグロ)

入選(Honorable Mentions)

星野選(和訳共)
back outide
the gallery . . .
an endless sky
Helen Buckingham (U.K.)
美術館の
裏手には ・・・
はてしない空
ヘレン・バッキンガム (イギリス)

Summer ends --
another mountain to climb
across the river
Garry Gay (U.S.A)
夏果てる --
川の向うに
登るべき山がもう一つ
ゲアリー・ゲイ (アメリカ)

autumn afternoon
a sunshower falls on one part
of the street
Bruce Ross (U.S.A)
秋の午後
日照雨が
街の一劃に降る
ブルース・ロス (アメリカ)

crematorium --
the flowers on the casket
still attract a bee
Trevor Christie (U.K.)
火葬場 --
棺の上の花が
蜂をなお呼ぶ
トレヴォ・クリスティ (イギリス)

柴生田選(和訳共)
fallen leaves
sandflies spiral
up a sunbeam
John Bird (Australia)
蚋が
螺旋を描き
光線を上へ
ジョン・バード (オーストラリア)

in a dream
clouds
contemplate me
John Stevenson (U.S.A)
夢の中
雲が
私をじっと見つめる
ジョン・スティーヴンソン (アメリカ)

the sky so pale this morning
to doubt even
the existence of stars
Jeanne Painchaud (Canada)
今朝のこんなに青白い空
本当に星が
あったのかしら
ジャンヌ・パンショ (カナダ)

into each jar
of peach preserves
the family stories
Penny Harter (U.S.A)
桃の砂糖漬の瓶
一つ一つに
その家族のあらましが詰まって
ペニー・ハーター (アメリカ)