haiku・つれづれ
haiku・つれづれ - 第3回
宮下惠美子
2020年5月18日にオランダ俳句協会(HKN)は創立40周年を迎えます。おめでとうございます!現会長のアリー・ド・クライバーさんにお話を伺いました。
(以下、宮下訳)
オランダの俳句事情
まず、簡単な歴史からお話します。
阿蘭陀と日本の俳句の歴史を繙くと、おそらく最初に俳句を作った西洋人は長崎の出島に置かれたオランダ出島商館のヘンドリック・ドゥーフ商館長(在任期間:1803~1817)であろうとと言われています。1818年刊の『美佐古鮓』にその作品と思われる句が見られます。
春風やアマコマ走る帆かけ船
稲妻の 腕を借らん 草枕
1973年にJ・ファントーレン著の『俳句 若い月』の初版が出版されました。オランダで最も反響のあった俳書です。1980年5月18日には、ユトレヒトでオランダ俳句協会(Haiku Kring Nederland )が20名の会員をもって創立されました。2020年現在では会員数は250名程、所在地はボスコープです。2005年にはインターネットの普及にともないHKNのウェブサイトhttps://haiku.nl/が開設されました。
ベルギーのフランダース俳句協会と協力して季刊誌『フュアーステインVuursteen(フリント・火打石)』の発行が1981年から始まりました。その創刊25周年を記念して俳句選集『フォンケレイハVonkenregen(雨の火花)』を出版しました。
また、2000年よりHKNはフランダース俳句協会と合同句集『アレフォーチ(説教壇へ)』を隔年で発行しています。
HKNの創立40周年を記念して、美しい俳句カードでゲームを楽しむことが出来る「ハイクカルテット」を作りました。2020年春には協会のホームページにショップもオープンしました:https://haiku.nl/winkel/
オランダ俳句協会の年間活動
過去40年の間にオランダでは俳句の知名度が随分と高まって来ました。何百万人もの人々が俳句とは何かを知っており、何千人もの人たちが定期的に俳句を作り、その中の何百人かの人たちがHKN会員として活躍しています。HKNは毎年総会を開き、講演、ワークショップ、朗読などが行われます。HKNでは、定期的に集まって会員同士の俳句の向上に努めている個々の地方の「ハイクカーネル」と呼ばれる句会の活動も支援しています。HKNでは、俳句に関係したテーマでコンテストを毎年開催しています。優勝者へはポール・メルケンさんがスポンサーをしている賞が贈られます。昨年の受賞式の写真をご覧ください。
From left to right. The winner of the haiku-suite competition in 2019: Joanne van Helvoort. The jury of the competition: Marian Poyck and Adri van der Berg. The sponsor: Paul Mercken.
2019年度の「ポール・メルケン奨励賞」の授賞式の写真です。左から右へ:2019年のハイク・スイート大会の優勝者ジョアンヌ・ファンヘルフォールトさん。ハイク・スイートは3~6句で構成するタイトルを持った連作で、優勝作品のタイトルは「私の小さな広場」でした。次いで、審査員のマリアン・ポイックさんとアドリー・ファンデルベルクさん。右端はこの毎年テーマが変わるコンテストのスポンサーであるポール・メルケンさんです。2020年は「俳文コンテスト」を開催しています。HKNはまたJAL財団の世界こどもハイクコンテストのオランダ開催を組織して子ども俳句の普及にも協力しています。2020年4月には新型コロナウイルスのパンデミックを受けて「コロナハイク句会」と名付けたハイクコンテストを開催し240句の応募が集まりました。
アリー・ド・クライバーさんの俳句
Arie de Kluijverさん
de sterren prikken gaatjes
in mijn fantasie
the stars are punching holes
in my fantasy
het regent zorgeloosheid
in de tuin van opa
it’s raining carefreeness
in grandfather’s garden
ヘンク・ファンデルヴェルフさんの俳句
Henk van der Werffさん
hoor ik de haan van opa
bij onze buren
granddad’s rooster
in my neighbour’s garden
futen zetten hun kraag op
tijdens het dansen
dancing grebes pull up
their collars
夜はまだ寒いけれども、求愛の鳥たちが写真のように首を持ち上げてダンスをし始めると春は直ぐそこまで来ていることが実感されます。求愛のダンスのあとに巣作りが始まり卵を産むので、これは春の句になります。
the goodbye as long
as the platform
(2018年のオランダ最優秀句)
HKNの役員でハイランドにお住まいのヘンクさんに現在はどのようにお過ごしですかと伺ったところ、HKNの図書館整備に奮闘中とのことでした。以下、お返事:
40年の歴史をもつHKNですので、創立当初の会員らが出版していた日本の俳句の書物などを探し出すことは難しくなっています。家庭や図書館などで整理をした際に不要となった本が私の処へ持ち込まれ、このようにして集められた本を整理して図書館が出来ました。2冊以上ある本はHKNの行事の折に、例えば「俳句の日」などで売って、利益は図書館の充実に当てられます。手元に全ての書籍を1冊ずつ保管してあり、それをPDFにスキャンして、HKNのウェブサイトで読めるようにするのが私の仕事です。会員だけが、パスワードを使って見ることの出来るサービスです。 新型コロナウイルスのパンデミックで、自宅に籠ってこの作業をしています。新しい俳句を作るためのインスピレーションには乏しい現状ですが、たまたま自宅が公園に隣接しているので、自粛の時ではありますが、時々公園へ出かけて散歩をしています。そうでなければ春は気づかないままに過ぎ去ってしまいますから!