HIA俳句大会

入選作品紹介

第18回 HIA俳句大会 入選作品

俳句部門

選者

稲畑汀子・鷹羽狩行・宮坂静生・有馬朗人・永田龍太郎
星野恒彦・大久保白村・安西篤・今瀨剛一・大輪靖宏
加藤耕子・大高霧海/
(外国語)木内徹・木村聡雄

国際俳句交流協会賞 (The Haiku International Association Award)

落蝉のまなこに空の遠くあり 杉並区 和場ゆすら
里山の小さくなりし踊の輪 上越市 藤井 敏子

俳人協会賞 (The Association of Haiku Poets Award)

踊る輪を抜けて授乳をしてをりぬ 秋田市 和田  仁

現代俳句協会賞 (The Modern Haiku Association Award)

道化師の笑ふ白夜の船着場 入間市 中武 純子

日本伝統俳句協会賞 (The Association of Japanese Classical Haiku Award)

囀をきく白書院黒書院 柏市 中川 素子

日本経済新聞社賞 (The Nihon Keizai Shimbun Award)

平成の天皇の声終戦忌 名古屋市 清水 京子

ジャパンタイムズ社賞

広島や海の際まで夜涼の灯 杉並区 境  幹生

稲畑汀子選

(特選)

炉話のやうに父の忌修しけり 秋田市 和田  仁
浮いて来い浮いてしまって沈めない 世田谷区 富田 敏子

(入選)

大輪の菊を咲かせて過疎に棲む 奈良市 北端 辰昭
長き夜や推敲かさねもとの句に 杉並区 草野 准子
父と子の冒険旅行夏休 文京区 保髙 史子
冷房に命長らへをりにけり 安芸郡 藤山 道子
買ひ換へて音の消えたる冷蔵庫 登米市 藤野 尚之
八月の光と影と祈りかな 横浜市 佐藤 一星
囀をきく白書院黒書院 柏市 中川 素子
長月や暑き東京寒きパリ 港区 青山 ゆり
セントラルパークに小さき菊花展 仙台市 岡本 幸治
言へぬ恋言はぬ恋あり遠花火 港区 青山 ゆり

鷹羽狩行選

(特選)

広島や海の際まで夜涼の灯 杉並区 境  幹生
まだ形ありて流るる薄氷 水戸市 井 弘子

(入選)

対岸の灯の呼ぶごとし夏料理 富士市 飯野 定子
聖菓切る等しく愛を分くるかに 福山市 田村祐巳子
踊る輪を抜けて授乳をしてをりぬ 秋田市 和田  仁
一筋の川で繋がる青田村 八千代市 若林 佐嗣
八方に出口入口大花野 仙台市 柏木ともみ
仰ぎ見る教会の鐘夏帽子 函館市 清水 暁子
落蝉のまなこに空の遠くあり 杉並区 和場ゆすら
肩の力抜けるだけ抜き山眠る 夷隅郡 岡西 宣江
太陽を転がしてゐる芋の露 横浜市 佐藤 一星
麭に寝て地の涯までの星月夜 大阪市 西上 禎子

宮坂静生選

(特選)

八月の午後のくらげはワルツです 広島市 神山 姫余
薔薇が好きタンゴが好きで意地っ張り 杉並区 和田とし子

(入選)

国引きの磯たおやかに海猫巣立つ 出雲市 宮本よしえ
薪能大きな闇の中にあり さいたま市 原田 静子
地球儀に今はなき国星流る 杉並区 草野 准子
オホーツクの霧来る夏炉焚きにけり 豊中市 小畑 晴子
万緑にクレーンの首ジュラ紀めく 豊島区 山口みはる
道化師の笑ふ白夜の船着場 入間市 中武 純子
ストーブに牛糞足してゲルの朝 三田市 𠮷村 玲子
洲浜より虚空をめざす銀やんま 宇治市 𠮷田みゆき
浮いて来い浮いてしまって沈めない 世田谷区 富田 敏子
干鰈(かれい)一点見つめ干し上がる 世田谷区 富田 敏子

有馬朗人選

(特選)

遠くより海鳴り響く鑑真忌 秋田市 和田  仁
道化師の笑ふ白夜の船着場 入間市 中武 純子

(入選)

民話聞く能登の古民家遠花火 中野区 宮川  夏
秋の海魚眼レンズに白き船 柏市 大隅 徳保
箏の音水打ちし露地抜け来たる 川崎市 飯川 三無
祭笛むつきの尻の走り出す 仙台市 柏木ともみ
存分に草笛吹いて離農せり 秋田市 和田  仁
奪衣婆の片足立つる大暑かな 仙台市 柏木ともみ
さやけしや古伊万里に描く青うさぎ 秩父市 須田 真弓
塔の鐘国境越ゆる白夜かな 秩父市 須田 真弓
ストーブに牛糞足してゲルの朝 三田市 𠮷村 玲子
霧深きロンドン塔の音なき夜 港区 青山 ゆり

星野恒彦選

(特選)

蛍火や母の掌いつも濡れてゐし 武蔵野市 杉山やよひ
髪ぬらす天安門の荒霧に 豊中市 小畑 晴子

(入選)

大輪の菊を咲かせて過疎に棲む 奈良市 北端 辰昭
大西瓜持つておゆきといはれても 杉並区 草野 准子
庭下駄の鼻緒のゆるび後の月 杉並区 草野 准子
一瞬の闇となりたり雷雨来る 練馬区 室谷 幸子
帰るさの背に更待の月出づる 神戸市 田中 由子
耳打ちをするかに蜻蛉近づけり 名古屋市 中村 啓輔
目の端に紅梅目の奥に白梅 世田谷区 富田 敏子
天草や十字に裂けし椿の実 杉並区 境  幹生
セントラルパークに小さき菊花展 仙台市 岡本 幸治
蜻蛉の広場や入るをためらはれ 久留米市 谷川 章子

大久保白村選

(特選)

呼べば来る汚染の牛や草の花 仙台市 畑中 次郎
長編に泣き短編に笑ふ秋 港区 青山 ゆり

(入選)

鯉幟立て日系の運動会 小平市 団  暁子
皺の手で地球の隅の草むしる 狭山市 白崎 艶子
水打つて地球を少し冷やしけり 川崎市 吉田ひろし
宇宙にも宇宙があると道おしへ 夷隅郡 岡西 宣江
口あけてドローン見てゐる鯉のぼり 杉並区 和田とし子
敬老日三百六十五日欲し 杉並区 和田とし子
我儘は言はねど頑固生身魂 富士宮市 渡辺 征子
平成の天皇の声終戦忌 名古屋市 清水 京子
奈良墨の滲みの青き十三夜 世田谷区 内村 恭子
矍鑠と昭和一桁夏羽織 南国市 秋本 弘子

安西 篤選

(特選)

ポケモンに靡く行列敗戦忌 杉並区 和田とし子
里山の小さくなりし踊の輪 上越市 藤井 敏子

(入選)

帽子とりサングラスとり私です 堺市 山戸 暁子
すぎてから気付く幸せ桜しべ 新宿区 原   綾
踊る輪を抜けて授乳をしてをりぬ 秋田市 和田  仁
焼藷を二つに割ればゴッホの黄 川崎市 吉田ひろし
夏霧や廃船にあるロシア文字 杉並区 境  惇子
一の酉屋台に干支の飴細工 横浜市 甲斐 輝子
囀をきく白書院黒書院 柏市 中川 素子
繻子(しゅす)の靴求めし路地の星あかり 京都府 佐々  宙
裏通りのジャズのセッション後の月 京都府 佐々  宙
踊り果てまだ蛸焼の売れてをり 刈谷市 柘植 草風

永田龍太郎選

(特選)

落蝉のまなこに空の遠くあり 杉並区 和場ゆすら
里山の小さくなりし踊の輪 上越市 藤井 敏子

(入選)

逝く友と若葉の中の同窓会 文京区 安岡 信子
山道も厭はず参る地蔵盆 横手市 子野日さち子
やぶ入りや母と長湯の一夜かな 北区 小竿 和子
恩讐は即かず離れず風は秋 夷隅郡 越川  悟
うす墨に暮れうす紅の酔芙蓉 春日井市 長谷川治恵
死生観ひとそれぞれに秋彼岸 草加市 江口 靖子
平成の天皇の声終戦忌 名古屋市 清水 京子
囀をきく白書院黒書院 柏市 中川 素子
冬木立つ密かに耐えよ今はまだ 熱海市 菊池 恵海
切支丹遺跡の島のほととぎす 久留米市 田中 妙子

今瀬剛一選

(特選)

オホーツクの霧来る夏炉焚きにけり 豊中市 小畑 晴子
湧水に濯ぐハンカチ旅なかば 柏市 中川 素子

(入選)

チェンバロの調べ薫風誘へり 秋田市 和田  仁
薪能大きな闇の中にあり さいたま市 原田 静子
母の日の母は老いたる眠り姫 秋田市 和田  仁
予備校に吸ひ込まれゆく夏帽子 茅ヶ崎市 塚本 治彦
万席にして鎮もれり月見船 相模原市 宮崎登美子
鰯雲旅の名残りの十セント 杉並区 境  惇子
緑さすアンデルセンの小さき家 名古屋市 清水 京子
むさし野の赤松に鳴る添水かな 府中市 伊原 正江
帰国して紅葉美し人優し 港区 青山 ゆり
新涼の影を正して楠大樹 江東区 千葉日出代

大輪靖宏選

(特選)

鳥帰る湖ひろびろと残りけり 神戸市 田中 由子
落蝉のまなこに空の遠くあり 杉並区 和場ゆすら

(入選)

対岸の灯の呼ぶごとし夏料理 富士市 飯野 定子
庭下駄の鼻緒のゆるび後の月 杉並区 草野 准子
踊る輪を抜けて授乳をしてをりぬ 秋田市 和田  仁
キャンプ張り夜は万葉の闇に寝る 下関市 木嶋 政治
秋の雲飛ぶ北限の摩崖仏 仙台市 畑中 次郎
稲揺るる風を遊ばせゐるごとく 富士宮市 渡辺 征子
湖に濁り広げて雪解川 杉並区 境  幹生
新涼や足に吸ひ付く青畳 三田市 𠮷村 玲子
奈良墨の滲みの青き十三夜 世田谷区 内村 恭子
つんつんと空押し上ぐる芽吹山 上越市 藤井 敏子

加藤耕子選

(特選)

戦争に業を煮やしてはたた神 夷隅郡 岡西 宣江
高からぬ山に親しみ大根蒔く 小牧市 鈴木 滋三

(入選)

隣り合ふことも一会や風鈴列車 弘前市 岩田 秀夫
鯉幟立て日系の運動会 小平市 団  暁子
天道虫半円球の小宇宙 渋谷区 佐藤みちゑ
裏の畑母に母の日なかりけり 横手市 高橋  遙
地球儀に今はなき国星流る 杉並区 草野 准子
星を見るただそれだけに帰省せり 秋田市 和田  仁
万席にして鎮もれり月見船 相模原市 宮崎登美子
漱石忌記憶にしかと師のあだ名 名古屋市 清水 京子
ワイマールの轍を踏むなど法師蝉 夷隅郡 越川  悟
この星に生きてる不思議星月夜 品川区 村田由美子

大高霧海選

(特選)

鳥帰る湖ひろびろと残りけり 神戸市 田中 由子
螢火となりて帰還の特攻兵 夷隅郡 越川  悟

(入選)

天道虫半円球の小宇宙 渋谷区 佐藤みちゑ
どこまでも時間引き摺る蝸牛 目黒区 増田 壽一
死の一字遠くなりし日敗戦忌 横浜市 臼杵 游児
はんざきの百年先を見詰める目 茅ヶ崎市 塚本 治彦
平成の天皇の声終戦忌 名古屋市 清水 京子
八月の光と影と祈りかな 横浜市 佐藤 一星
菖蒲田に光琳屏風立ちにけり 世田谷区 佐野 博子
折り鶴にオバマの誠原爆忌 知立市 久永小千世
斑鳩のいづれの径も曼珠沙華 安芸郡 小早川一真
しなる竿黒鯛と釣り師の一騎打 品川区 村田由美子

ハイク部門

選者

木内徹・木村聡雄

特選 (Prize Winners)  木内 徹 選 (和訳共)

Empty street
Birds flying away
First golden leaf
Laura Nicola(Denmark)


人のいない通り
鳥が飛び去る
最初の金色の葉っぱ
ローラ・ニコラ(デンマーク)

sunflowers field
son asks about
universe
Andrius Luneckas(Lithuania)


ひまわりの畑
息子が尋ねる
宇宙のことを
アンドリウス・ルネカス(リトアニア)

入選 (Honorable Mentions)  木内 徹 選 (和訳共)

noon darkness
watery bullets pound
every roof
Anthony Obaro(NIGERIA)


昼の暗闇
雨のように銃弾が跳ねる
どの屋根の上にも
アントニー・オバロ(ナイジェリア)

On a park benc
I have nothing for you
two sparrows
Angela Cornelia Voss(Germany)


公園のベンチで
私はあなたたちに何もあげるものがない
二羽の雀に
アンジェラ・コーネリア・ヴォス(ドイツ)

from the rooftops
of the houses, smoke lifts
light as a breath
Pere Risteski(Macedonia)


家々の
屋根の上から、煙が上がる
吐息のように軽々と
ペレ・リステスキー(マケドニア)

winter evening
on my tambour frame
a meadow’s blooming
Anna Switalska-Jopek(Gdansk)


冬の夜
私の刺繍枠のうえに
草原の花が咲く
アナ・スウィタルスカ=ジョペク(ポーランド)

特選 (Prize Winners)  木村 聡雄 選 (和訳共)

cranes in flight
my father’s worn coat
full of autumn wind
Dorota Pyra(Poland)


鶴飛ぶや
父の古外套
秋風満つ
ドロータ・ピーラ(ポーランド)

deep in the cat’s eyes
the crow’s caw caw caw
Roberta Beary(U.S.A.)


猫の眼の深く
カラスのカァ・カァ・カァ
ロバータ・ビアリー(アメリカ)

入選 (Honorable Mentions)  木村 聡雄 選 (和訳共)

traces in the garden
jasmine
rediscovering me
Lilia Racheva(Bulgaria)


庭の足跡
ジャスミンに
我ふたたび
リリア・ラチェーヴァ(ブルガリア)

arriving on the farm-
the open arms
of the scarecrow
Kwaku Feni Adow(Ghana)


農場に着くなり
両手を広げて
案山子
クヮク・フェニ・アドゥ(ガーナ)

minor seventh . . .
a car door squeaks
to the blackbird’s song
mayflowerbg(Maya Lyubenova)(Bulgaria)


マイナーセブンス和音
ツグミの歌に
車のドア鳴く
メイフラワーbg(ブルガリア)

dark night
every raindrop a star
falling
kjmunro(Katherine Munro)(Canada)


闇夜
雨一粒一粒星の
降る
kjマンロゥ(カナダ)